「一刻者」な人

畳の上の“ 一刻者 ( いっこもん )
柔道家・井上康生が守り続けるもの

“一刻者”とは南九州の話し言葉で頑固者のこと。
全量芋焼酎「一刻者」は、製造が困難な芋麹で仕込み、
“芋100%”に頑固なまでにこだわる。
その独自製法が、豊かな香りと芋だけでつくるおいしさを実現した。
厳しさの中に生まれる、深み——。
宮崎で生まれ育った柔道家・井上康生の畳の上での生き方も、
まさに“一刻者”の言葉に相通じるものがある。
畳の上の“一刻者”柔道家・井上康生が守り続けるもの 畳の上の“一刻者”柔道家・井上康生が守り続けるもの

「若い選手は、みんな頑固者ですよ」

現役時代から常に第一線で活躍を続けてきた
柔道家・井上康生。
現在は後進の育成と柔道の普及に努める指導者は、
日本を代表する現役選手たちをそう表現する。

その口ぶりが少し面白く感じられた。
まるで自身の現役時代はそうではなかったように聞こえたからだ。
芸術的と称された「内股」に、
あれほどこだわり続けた柔道家がいただろうか。
「いつも次へ次へ、と考えてきた。 昔のことは忘れちゃいますね」

師としての父の教え

一つの場所に留まらない。
それは、父・明の教えでもある。
小学6年生で史上初の全国大会連覇を果たした時も
「大切なのは、ここからどうするかだ」。

そんな父子にとって、
柔道はコミュニケーションの道具でもあった。
「負けたあとなんかは、よく風呂で話をしてくれました。
のぼせながら聞いていましたね」
厳しく、時に大らかでもあった父の姿。
それはどことなく宮崎の風土とも重なるという。

厳しさが生む、深み

南九州の話し言葉で頑固者を意味する、“一刻者”。
全量芋焼酎「一刻者」は芋100%にこだわり、
麹には「米麹」ではなく「芋麹」を用いる。
厳格に守り続ける独自の製法だからこそ、
芳醇 ( ほうじゅん ) で深みのある香りが生まれる。
「勝負の結果で味わいが変わるのがお酒の不思議。
『一刻者』の香りとすっきりした味わいは、勝利の喜びを倍増させてくれます」
勝利を目指す日本柔道界の頑固者たちを前に、井上氏がこだわることは。
「私自身が学び続けることです。
トレーニングの理論や方法は指導者として常に考え続け、
アップデートし続けたい。
それが自分の軸にある。そこには頑固でありたい」
そんな井上氏が長く指導してきたある選手が、
大会優勝後にこう語ったことがある。
「自分は何者なのかを、確かめることができた」
柔道家が戦う相手は、別の柔道家ではない。
自分自身だという。
畳の上の相手を通して、自分を見つめることができるか。
「自分とは何かの答えは、己の中にしか見つけることができない。
だから、周囲の評価や情報に振り回されていては強くなれない。
『これだ』と思うことを信じて、
ひたすら突き詰めることのできる人間だけが、上へ行ける。
柔道とはそういうものだと思います」。
そんな選手たちを、支えてやりたい。
世界と戦う指導者は、そう言葉を継ぐ。
己の技を磨き続け、そして学び続ける。
柔道家・井上康生の言葉の重みは、
己を見つめ続けてきた厳しい眼差しから生まれるのだろう。
厳しさが生む、深み——。
その生き方は「一刻者」から立ち上る香りにも似ている。

井上康生

プロフィール

柔道家 井上康生(いのうえ・こうせい)

プロフィール

柔道家 井上康生(いのうえ・こうせい)

1978年、宮崎県宮崎市出身。
10代から日本を代表する選手として活躍し、
シドニー五輪(2000年)や世界柔道選手権などで金メダルを獲得。
現役引退後、全日本柔道男子監督に就任し、
東京五輪では史上最多となる5個の金メダルに導いた。

撮影/スケガワケンイチ
文/安藤智郎

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